資料提供:がん対策プロジェクト「乳がん医療の地域格差是正に関する提言書」
こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医&病棟医@今井です
日本医療政策機構さんから1月31日付で以下の資料が公開されました。医療関係者のみならず一般の方も知っておいても損はない内容かなと思われましたのでシェアします。以下興味ある方一読してください。
【政策提言】がん対策プロジェクト「乳がん医療の地域格差是正に関する提言書」(2025年1月31日)
PDFはこちらです。表紙だけ↓
今井個人としてはP25~の内容は是非知っておいてほしいと思います。以下引用↓↓
乳がん疾患治療に付随する治療選択肢や医療的支援(妊孕性温存・アピアランスケア・乳房再建)の地域差
主として女性のがんであり、若年の罹患者も多い乳がんでは治療に伴う喪失に対するサバイバーシップ支援が重要である。例えば、将来自分の子どもを授かる可能性を残すために、がん治療の前に、卵子や精子、受精卵、卵巣組織の凍結保存を行う妊孕性温存療法や、がんやがんの治療によって起こる外見の変化に対して患者が自分らしい生活や社会とのつながり、治療への意欲を保つことを目指して外見へのケアを行うアピアランスケア、乳がんの切除により変形した、あるいは失われた乳房をできる限り取り戻すための乳房再建術等である。
本来であれば必要な全ての乳がん患者がこうした治療選択肢の存在を知り、希望すればこれらの医療支援を大きな困難を伴うことなく享受できることが望ましい。他方で、実情としてこれらの医療・ケアへのアクセスには地域格差が存在する。特に、妊孕性温存や乳房再建については専門性が高い医療であるため、どこに居住していても地元で治療が受けられることを目指すことは現実的に難しい側面がある。しかしながら、がんの診療を受ける中で、治療/ケア自体に係る情報や相談・治療/ケアの対応可能施設等の情報が、必ずしも患者に適切に伝えられていないという指摘もあり、情報の差が患者にとっての不利益や不平等につながっている可能性がある12。
また、患者にとって保険適用外である妊孕性温存療法やアピアランスケアの経済的負担は大きく、患者が経済的な理由でこれらの医療を諦めることなく享受するためには自治体等からの支援が患者視点では期待されるが、これらの費用や助成の状況にも地域差が認められている。例えば、妊孕性温存療法の費用は自由診療であるため、その価格に地域・施設格差が存在することが指摘されている42。助成に関しても、温存に至らなかった場合のカウンセリング費用や凍結した検体の保存更新料等は一部自治体のみで支援があり43、自治体からの助成金等の支援状況にも地域差が存在している。アピアランスケアに関しても、医療用補正具等の購入にかかる費用助成制度や助成額に地域差が存在している44。
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患者の社会経済的背景に応じた支援の不足(中小企業等での就労支援の課題等)
がん治療の継続には、高額な費用負担を伴う。がん治療と仕事の両立(離職防止、再就職支援)は、経済的負担の軽減だけでなく、社会とのつながりを維持し、自分らしい生活を送るために重要である。乳がん患者では若年や働き世代が多く、また、相対的に非正規雇用割合が多い女性が大半の罹患者である乳がんにおいて、就労支援は特に重要な課題である。
乳がん患者における治療と仕事の両立支援に関する研究14によると、非正規雇用者は正規雇用者よりも診断後の仕事の離職率が高いこと、就労のために治療計画の変更を余儀なくされている者がいること等が報告されている。現行の企業からの私傷病による休業者への就労支援状況では、非正規雇用は正規雇用と比較して時間単位年休制度の導入・適用が少なく休暇を取得しにくいこと等が背景にある。また、大企業と比べると、中小企業では、通常の有休休暇以外で連続して1か月以上従業員が私傷病時に利用できるような私傷病に関する休暇・休業制度が少ない、制度上の最長休業期間が短い等、患者が企業のがん就労支援を受けられるかどうかは、所属する企業の規模や方針に左右される状態となっている。特に、地方では、都市部と比べて、事業規模が小さい企業が多く、非正規雇用も多いため、就労支援へのアクセスについても地域格差が存在すると考えられる。
がん治療を受ける患者の就労環境や事業者からの支援について調べた坂本等の研究45では、従業員等のがん患者対応で事業所が苦慮した案件について専門家(主に社会保険労務士と産業医)へ相談をした事業所は18.4%に留まり、地域産業保健センター及び医療機関の相談部門の活用は殆ど無かった。また専門家へ相談しなかった理由として、18.9%の事業所が「相談する先がわからなかった」と回答しており、企業や事業者と医療提供側を適切に連携させる仕組みが不十分であることが示唆された。
また、医療提供側における乳がん患者の就労を支援する環境においても地域格差があることも明らかとなった。例えば、乳がんを始めとするがん患者にとっては、治療と仕事の両立に向けて、働く人(患者)・家族、主治医、企業・産業医等の間のコミュニケーションを支援する人材である両立支援コーディネーターは非常に重要な役割を果たす。しかしながら、当該専門家の都道府県別対人口10万人で配置状況を調査したところ、最高の都道府県と最低とで約3倍もの差異が存在している30。雇用問題と経済的問題を抱える患者はそれを持たない患者の3倍以上うつ状態にあったことも明らかとなっており、精神的苦痛を予防するためにも、がん患者の地域格差無き仕事と治療の両立支援が極めて重要と思われる45。
こうした患者の社会経済的な背景が、がんのアウトカムにどのような影響をもたらすかについて、地域の社会経済的な状況の視点:ADI(Areal Deprivation Index/地理的はく奪指標:貧困・剥奪の地理的集中を要約する小地域の地理的統計指標)を活用した研究が進められている。このADIで困窮度の高いエリアほど、死亡率が高く、早期診断率が低く、手術受領も少なく、拠点病院活用機会も少ないという報告があがっている。
これは、がん医療の質の均てん化が進められてもなお、社会経済的な背景に基づく健康格差が地域間で依然として存在することを示している。患者アウトカムを改善していくには、単に個々の患者が受ける治療に対する支援のみならず、貧困や困窮といった患者の社会的背景に対するアプローチ支援について考慮する必要性を示唆している。」
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