公開日:2021年04月08日

社会保障制度について考える~前期高齢者医療費の財政調整の現状と課題~

こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。

 

社会保障制度の現状についての資料を調べていましたが、現状把握と今後の改善すべきポイントについて、日本総研にまとまっている資料があったのでご紹介します。特に前期高齢者にポイントを絞り、どのように社会保障費用を削減するための施策が考えられるのか、という点を議論した資料です。興味ある方は是非全文確認して読んでみてください。

前期高齢者医療費の財政調整の現状と課題―透明化と現役世代の負担抑制を

 

個人的に気になった部分、本当に確認しておきたい文章はP18~で、そこだけ抜き出してみます。特に気になったところ赤くします。

「(3)前期高齢者の負担適正化
ポイントの二つ目は、前期高齢者の保険料負担および窓口負担それぞれの適正化である。
まず、保険料負担については、被用者保険と国保とに分けて検討する必要がある。国民皆年金制度のもと、被用者保険に加入している前期高齢者のほぼ全員が給与のほかに公的年金を受給しているはずである。平均的な厚生年金受給者の場合、公的年金給付額は年間186万円程度になる。
組合健保加入者一人当たり総報酬の平均は563万円、前期高齢者について5歳階級でみると65〜69歳、70〜74歳はそれぞれ平均比146万円少ない416万円、同じく168万円少ない395万円である(図表16)。このように、前期高齢者の総報酬は平均より低いものの、年金額を仮に186万円として足し合わせると、65〜69歳、70〜74歳それぞれ602万円、581万円となる。総報酬の平均を上回る。協会けんぽについては、加入者一人当たり総報酬の平均は392万円と組合健保の85%程度の水準であるが、前期高齢者の総報酬は平均とそれほどの差はない。
現在、被用者保険に加入している前期高齢者は、総報酬のみに保険料がかかっているが、そうではなく、総報酬+公的年金に保険料をかけるように改めた方が合理的であると考える。租税三原則の言葉を借りれば水平的公平に適う。その分、保険料率を引き下げることができ、恩恵は64歳以下の層にも及ぶ。
とくに、被保険者のうち前期高齢者が8.2%を占める協会けんぽにおいては効果が見込める。併せて後期高齢者支援金を被用者保険グループ内で按分する際の総報酬割における報酬も、総報酬額だけでなく、公的年金額を合算するようにする。

次に、窓口負担である。現在、前期高齢者の窓口負担は、69歳までと70〜74歳とで異なっている(図表17)。69歳までは3割、70〜74歳は2割(現役並み所得者は3割)となっている。2019年9月にスタートした政府の全世代型社会保障検討会議においては、窓口負担の見直しが中心議題となったが、見直し対象は、後期高齢者に絞られた。もっとも、世代間の公平を考えた際、そもそも年齢で負担割合に差を設けることには疑義があり、かつ、現役世代の負担軽減という観点からは、70〜74歳の窓口負担も含め議論されるべきであっただろう。

(4)前期高齢者の定義再考
ポイントの三つ目は、65〜74歳まで10歳の年齢層を一括りに前期高齢者とする現行定義の再考である。
65〜69歳と70〜74歳とでは、一人当たり医療費に13万円の差があることはすでに述べた通りであり(図表13)、こうした差を捨象してしまう現行定義はラフな印象がある。実際、第3章4節で紹介した2018年度からの国保財政運営においては、5歳刻みの一人当たり医療費のデータが用いられている。
就労面においても、65〜69歳、70〜74歳の労働力率(男性)は、それぞれ59.5%、41.1%と18.4%の差がある(注15)。2021年4月、改正高齢者雇用安定法が施行され70歳までの雇用確保が努力義務ながら事業主に課されるようになったこともあり、65〜69歳の労働力率についてはさらに上昇していくことも予想される。
このような実態を踏まえれば、医療保険制度においても65〜74歳を前期高齢者と一括りにするのではなく、高齢者雇用の進捗なども見極めつつ、例えば69歳までは支える側に位置付けるなど、定義を見直していく必要があろう。

 

赤文字で示した部分、今後の社会保障制度を議論していく段階でも必ず論点になっていくでしょうね。本丸の後期高齢者の医療制度をどうするか、という議論と共に議論の推移は注視していきたいですね。

 

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