公開日:2021年02月25日

この判決は医療崩壊を呼び起こす?~日赤に6700万円賠償命令 脳手術後に死亡 広島高裁、一審を変更~

こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。

 

ネットニュースで衝撃的な記事を見つけましたよ。これは医療崩壊を呼び起こすのではないでしょうか?

日赤に6700万円賠償命令 脳手術後に死亡 広島高裁、一審を変更

「 2013年に広島市東区の女性=当時(41)=が広島赤十字・原爆病院(中区)で脳動脈瘤(りゅう)の手術を受けた後に死亡したのは医療ミスが原因として、遺族5人が同病院を運営する日本赤十字社(東京)に計7540万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が24日、広島高裁であった。西井和徒裁判長は、遺族側の請求を棄却した一審広島地裁判決を変更し、医師の注意義務違反を認めて計6722万円の支払いを命じた。  女性は13年6月19日に動脈瘤破裂による軽度のくも膜下出血と診断され、同日に同病院でカテーテルによる血管内手術を受けた。脳の動脈内にできた瘤(こぶ)の中にコイルを詰め、血液が入らないようにして再破裂を防ぐ手法だったが、手術中に瘤が破裂してくも膜下出血を起こし、脳死状態となって12日後に死亡した。  西井裁判長は、コイルが瘤の内側を傷つけたり破ったりしないよう瘤内に外枠を作る工程で「医師に医療水準にもとる注意義務違反があった」とし「外枠形成が不十分な部分からコイルが穿孔(せんこう)することで破裂が起こったと推認するのが最も合理的」と判断。注意義務違反と女性の死亡に相当の因果関係があると認めた。  提訴は14年。19年2月の地裁判決は医師の注意義務違反を否定し、遺族側の訴えを棄却したため、遺族側が控訴していた。  判決後、原告の一人で父親の上瀬忠義さん(75)=中区=が中区で記者会見し「手術前に『2時間半で手術室から歩いて帰れる』と言われていたので納得いかなかった。頑張ってよかった」と話した。広島赤十字・原爆病院は「判決文を精査し、対応を協議する」とした。」

 

医療では残念ながら臨まない結果がでることがままあります。当院が診療で携わっている在宅医療の分野でさえそうですし、特に救命できるか否かの時間勝負の救急の現場では多くの患者さんがそうなってもおかしくはないのは医療者ならよく理解できるでしょう。

その中で治療関連でなくなってしまった場合でも、最低限、合併症と医療過誤とは区別しなければなりません。

医療過誤:当時の医療水準を鑑みて、明らかに結果が病気が原因ではなく、医療者の人的要因、ヒューマンファクターや手技的な問題により引き起こされたもの(例:肺癌の見落とし、造影剤の誤投与など)

合併症:最善の医療を尽くしたとしても治療に随伴するどうしても避けられない可能性のあるもの(例:手術に伴う術後感染症、全身麻酔後のせん妄など)

 

 

医療過誤に関しては医療者にその責を問うのはあり得るのかと思いますが、合併症に関してはどうしても一定確率で起こる可能性があるため、その責任は医療者に問うては現場が回らなくなってしまいます。

そこで今回のこの案件ですが、普通に考えれば脳動脈瘤破裂によるクモ膜下出血の患者さんでのコイル塞栓術であれば、手術手技に起因する結果であろうとも、それはどう考えても合併症の区分になるのではないかと思います。どうしたってコイル塞栓術中の術中破裂は0にはできないと思います。

詳細がわからないのですが、普通に考えてコイル塞栓術の術中破裂で損害賠償が請求、認められるのであれば、日本全国の脳神経外科医はクモ膜下出血の患者さんの治療が不可能となってしまいます。だって術中破裂、どうしても0になんてするの不可能ですもん。

せめて説明義務違反程度の判決であれば医療崩壊にはつながらい判例になったと思いますが、治療自体が問題、と言われるのは普通の医師の感覚では理解できないですね。

 

この判決、本当にいいのでしょうか?医療崩壊を呼び起こす判決とならないでしょうか?詳細をもっと知りたいですね。

 

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