公開日:2021年02月24日

コロナ後の感染症対策を見据えて考える~日本の超高齢化社会における薬剤耐性の脅威~

  1. こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。

 

コロナ後の新興感染症への対応は今後どうすべきか、専門家がどう考えているのか色々資料を探してみたら、ちょっと趣旨は違いますが面白い視点の資料を見つけましたのでご紹介します。「日本の超高齢化社会における薬剤耐性の脅威」という日本医療政策機構が出した資料ですが、今後の世界の感染症治療をリードしていくためにも、次回のパンデミックに備えるためにも、抗菌薬の開発に関して企業が取り組みやすいようにイノベーションを呼び起こす必要性がありますよね、という内容です。

日本の超高齢化社会における薬剤耐性の脅威:ヘルスケア、公共政策、および経済的な健全性への影響

 

文中で個人的に興味のあった個所を抜き出すと

「このうえなくAMRの脅威が高まっているにもかかわらず、この分野のイノベーションはほぼ足踏み状態にあります。現在、臨床試験を実施中の抗微生物剤は世界で41種類にとどまり、世界保健機関(WHO: World Health Organization)が定めた重大病原体を治療できる可能性を持つ薬剤はうち
13種類に過ぎません。

これは、AMR治療薬の市販後に、企業が躓いてしまう障害があるためです。米国食品医薬品局(FDA: Food and Drug Administration)の承認を受けた14種類の抗菌剤を開発した企業のうち、半数がこの10年間に破産したか、または深刻な経営難に陥っています。新たな抗微生物剤が開発され承認されても、薬剤の有効性を維持し新たなAMRの出現を遅らせるために、その使用は必要最低限にとどまるためです。公衆衛生の観点からは論理的なアプローチを実施している一方で、抗微生物剤のイノベーションに対する将来のニーズに、現在の市場構造は対応することができていません。画期的で有効な新たな抗微生物剤の開発に成功した企業も、こうした「市場の失敗」のせいで存続できません。

現在の市場構造では、安定的な抗微生物剤パイプラインの維持に必要な投資を支えられず、イノベーションが抑制され、世界はAMRの脅威に一層さらされています。しかしながら、資金調達とイノベーションを促す政策の推進を通じて、抗微生物剤の開発に伴う課題への対処も試みられています。2020年7月、20社以上のバイオ製薬会社による「AMRアクションファンド」の設立が発表されました。2030年までに2~4剤の新たな抗微生物剤の上市を目指す画期的な試みです。最も耐性が進んでいる細菌や、命を脅かす感染症に効果を発揮する、新たな抗微生物剤の臨床研究を支援するため、約10億ドルの資金が調達されました。\\

研究開発促進に向けて医薬品市場を後押しするこの「プッシュ型」の取り組みは、抗微生物剤のイノベーションに欠かせません。
ただし、これだけでは市場の失敗を是正することは難しいと思われます。医薬品市場において、重要な抗微生物剤のイノベーションへの投資が推進されるよう、市販後に十分な資金援助を行うことで抗微生物剤市場への投資を誘導する「プル型」のインセンティブも不可欠です。 」

 

 

新規抗菌薬は乱用はしないで大切に使おう!という意識が医療者はものすごく高いと肌感覚で理解できますので、開発しても使用料が少ない、というのも確かに理解できますね。

医薬品市場としてはこれまでの日本は潤沢な薬価設定があったため各国からの新薬が豊富に流入してきましたよね。つい最近ではオプジーボの議論もあったことは記憶に新しいかと思います。

今後日本の医薬品開発市場は薬価改定などもあり右肩下がりで薬価が減り、研究開発起業にとっては魅力は減っていくかと思いますが、どのようにプル型、プッシュ型のインセンティブ設計をしていくのでしょうか?個人的に政策をどのようにしていくのか、今後の精度設計に関して非常に興味が出てきました。

 

え?インセンティブ設計何もしない?そうすると世界の抗菌薬市場や製薬会社から日本市場がそっぽを向かれる=結局は国民が新薬の恩恵を受けられない可能性が高くなると思いますよ。

どのように日本全体を研究開発するのに魅力的になるような市場とするのか、国の考えがこれからどうなるのか、制度設計をどのようにしていくのか、興味をもって定点観測していきたいと思います。それが次の新興感染症流行に対しての準備になるとも思っています。

 

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