公開日:2019年11月08日

社会保障制度改革の未来を予想する~経団連の資料より~

こんにちは、札幌のかかりつけ医&在宅医@今井です。

 

社会保障制度が今後どうなっていくのか、個人的にはここ10年程ずっと気になって諸々資料を読み込んできていますが、その中で経団連からの提言や資料は結構参考になる内容が多いですね。

例えば過去になりますが2013年の10月13日に公表された資料、「社会保障制度改革の推進に向けて」は2019年現在から振り返ってみても大部分がその通りになっていることは否定できないかと思います。

↓以下上記HPより抜粋

Policy(提言・報告書) 経済政策、財政・金融、社会保障社会保障制度改革の推進に向けて

2013年10月15日
一般社団法人 日本経済団体連合会

2013年8月、政府は、社会保障制度改革国民会議の報告書を踏まえ、社会保障制度改革推進法(以下「推進法」という。)第4条の規定に基づく「法制上の措置」の骨子を閣議決定した。これに基づき、次期臨時国会では社会保障制度改革の工程表ともなる法律案が審議されることとなる。

そこで、税と社会保障、さらには財政を含めた一体改革実現の観点から、今後の検討に向けた経済界の考え方を下記により提示する。老若男女の別を問わず、すべての世代が互いに支え合い、安心して暮らせる経済社会の構築や、持続可能で成長と両立する社会保障制度の確立、さらには、社会保障分野における地域や民間の役割を高めるための環境整備が図られるよう、政府・与党の真摯な対応を望みたい。

1.着実な消費税率の引上げ

社会保障と税一体改革の趣旨に鑑み、2014年4月の消費税率8%のみならず、2015年10月に消費税率10%の既往方針を堅持する。

2.給付の重点化・効率化策の着実な実施

社会保障制度の持続可能性を高めるためには、給付の重点化・効率化は不可欠である。今後の個別施策の検討にあたっては、重点化・効率化策が着実に実施されるよう、結論を得るべきである(別紙参照)。併せて、制度横断的に改革の実を上げているか否かを定期的にしっかりと検証していく必要がある。

3.際限なき社会保険料負担増の抑制

現役世代の勤労者や企業が負担する社会保険料は賃金に対して課されるため、なし崩し的な負担の拡大は、賃金や雇用を抑制し、企業や個人の活力の発揮や経済成長を阻害する。社会保険料負担の増加に一定の歯止めをかけることが肝要であり、給付の重点化・効率化への取組みが十分でないまま、後期高齢者支援金への全面的な総報酬割並びに介護納付金への総報酬割の導入や、被用者保険、被用者年金における標準報酬月額の上限額の見直しを行うべきでなく、再考が必要である。

4.自助努力の積極的な奨励

自助努力を積極的に促す施策も必要である。例えば、推進法に盛り込まれた健康管理や疾病・介護予防などの自助努力を行うインセンティブを持てる仕組みの検討に加え、老後の所得確保のための私的年金の普及・拡大や、医療・介護ニーズへの備えに対する政策的な支援の拡充を図るべきである。

5.国民への分かりやすい説明

今回の改革にあたって、国は、現状との対比での給付や負担の変化、わが国財政や国民生活への影響などの定量的なデータを示し、分かりやすい情報発信に努めるべきである。また地方においても給付と負担の動向など、地域における社会保障の姿の定期的な発信に努めるべきである。

6.社会保障・税番号制度の利活用促進

負担能力に応じて負担する仕組みを構築するためには、番号制度の利活用により所得の捕捉を確実なものにする必要がある。併せて、データに基づく医療サービスの重点化・効率化を図るため、情報保護体制の構築や本人の了解を前提とした医療データの活用に向けた環境整備が急がれる。

以上

別紙

重点化・効率化の具体例

分野 項目
医療 後発医薬品の使用促進
診療報酬・療養費の不正請求に関わる指導・監査の強化
70~74歳の患者負担の本則化(1割→2割)
医療保険の給付範囲の見直し(一部の高度医療の適用除外・保険免責制等)
医療の標準化、外来診療を含む診療報酬の包括払い化の推進
医療保険給付費の総額管理制度の検討
介護 軽度者の訪問介護給付から生活援助を除外
予防給付を再編し自治体独自の高齢者福祉事業で吸収
補足給付の除外(税で対応)
所得や要介護度に応じた負担率の設定
ケアプランの作成への利用者負担の導入
特別養護老人ホームの利用者限定(重度者・低所得者)
区分支給限度基準額の引き下げの検討
年金 マクロ経済スライドの見直し
(物価変動率がマイナスあるいは低い場合でも発動)
低年金者に対する福祉的給付の見直し(制度廃止も視野)
高所得者の年金受給額の適正化
子育て 児童手当の特例給付の廃止や所得限度額の見直しの検討
民間活力を活かした保育サービスの拡充

  1. 認可保育所の設置等において法人格による差を設けない
  2. 株式会社が設立した保育所への施設整備費や賃料の助成を拡充
「幼保連携型認定子ども園」への株式会社の参入を認める
以上
どうでしょうか?一部できていない部分もありますが、振り返ってみてみると結構政策で対応されて現実化していると思いませんか?
さてそんな経団連ですが11月8日に新たな提言をだしてくれています。早速一読してみましょう。特に今井が気になる部分は赤文字にしてみました。

医療保険制度の改革に向けた被用者保険関係5団体の意見

 

令和元年11月8日

健康保険組合連合会
全国健康保険協会
日本経済団体連合会
日本商工会議所
日本労働組合総連合会

医療保険制度の改革に向けた被用者保険関係5団体の意見

現在、政府は、全世代型社会保障検討会議を設置し、社会保障制度を誰もが安心できる制度とするため、議論を進めている。高齢化により医療需要が高まるなか、2022年には団塊の世代が後期高齢者に入り始め、医療給付費の急増が見込まれる一方、支え手である現役世代の人口は急減が見込まれている。医療・介護・年金を合わせた保険料率の30%時代が目前に迫るなど、すでに限界に達している現役世代や企業の拠出金を合わせた保険料負担は、今後一層過重になることが予想されている。こうした状況が現役世代の可処分所得の減少や将来不安を招き、消費活動、ひいては経済活動へ悪影響を及ぼすことが懸念される。

このような共通する問題認識のもと、被用者保険関係5団体は、下記の通り意見をとりまとめた。政府におかれては、将来にわたる制度の機能の発揮と持続性確保に向け、全世代型社会保障検討会議の取りまとめ及び骨太方針2020の策定において下記項目を盛り込み、給付と負担の見直しを含む医療保険制度改革を確実に実行するよう強く要望する。

1.後期高齢者の窓口負担について

高齢者の医療給付費は増大し、それを賄うための拠出金が保険者の財政を圧迫し、保険料率引き上げ等により現役世代の負担となっている。現役世代に偏った負担を見直し、高齢者にも応分の負担を求めることで、給付と負担の世代間のアンバランスを是正し、公平性、納得性を高めていくことが重要である。現在、70~74歳の高齢者の窓口負担が2割であることを踏まえ、75歳以上の後期高齢者の窓口負担についても、低所得者に配慮しつつ早急に原則2割とする方向で見直すべきである。

2.拠出金負担の軽減について

2022年度から急激に増加する拠出金の負担に耐え切れず、解散を検討する健保組合がさらに増加する可能性がある。現役世代の負担に過度に依存する制度では、持続可能性を確保できない。高齢者の医療給付費に対する負担構造改革を早急に断行すべきであり、安定財源を確保した上での公費負担の拡充など、現行制度の見直しを含め、現役世代の負担を軽減し、保険者の健全な運営に資する措置を講じるべきである。特に、後期高齢者の現役並み所得者については、それ以外の者と同様に、公費負担50%とするべきである。なお、現役並み所得者の範囲を拡大する場合は、少なくとも拠出金負担増が生じないよう財政支援等の負担軽減措置が必要である。

3.保険者機能の強化について

健康寿命をより延伸させ、健康な高齢者には社会保障を支える側に加わっていただくことが、制度の持続可能性を高めることにつながる。そのためには、職域・地域に関わらず、すべての医療保険者には、加入者に対する健康増進などこれまで以上に重要な役割が求められる。個々の保険者が、それぞれの特性を活かして保険者機能を発揮できる制度体系を維持し、企業、労働組合との連携を含め、保険者機能をより強化していくべきである。

4.医療費の適正化等について

持続可能な制度を構築していくためにも、医療費の適正化に取り組むことは不可欠である。地域医療構想の推進や医療機能の分化・連携による医療の効率化や地域間格差の是正とともに、総合診療専門医の積極的育成など、より効率的・効果的な医療の実施を目指すべきである。また、終末期医療のあり方の見直し(患者の意思の尊重等)、適切な受診行動の促進など医療の有り様を見直していくとともに、「国民皆保険の持続性」と「イノベーションの推進」を両立し、「国民負担の軽減」、「医療の質の向上」を実現するための薬価制度の抜本改革の推進や後発医薬品のさらなる使用促進、フォーミュラリ(生活習慣病治療薬の適正な選択)の導入の推進、薬剤処方の適正化(重複・多剤投薬の是正、服薬管理の徹底、向精神薬の使用の適正化など)、診療報酬の包括化、ICTを活用した医療の適正化・効率化など、保険診療や診療報酬のあり方に踏み込んだ見直しに取り組むべきである

5.社会保障の持続性確保について

社会保障制度の持続性を確保するためには、国民の理解を得ながら、社会保障にかかる歳入・歳出両面について、さらに検討を進めるべきである。この際、被用者保険の保険料への負担転嫁は行うべきではない。

以上
どうでしょうか?言っていることは至極真っ当なことを言っていると感じますが皆さんはどう考えますか?
この提言を読んで、さらに過去の提言も併せて含めた上で自分が感じたことは、社会保障制度改革はこれまで2025年を一つの目途として行ってきたが、改革自体はやはり遅れ遅れとなっている感が否めないこと・・・(だってこの内容の提言、もう数年前から同じ様な内容でほぼほぼ変わりないんですもん)ということはこの遅れはどこかの段階で必ず歪みとなって大きく変化を促す力となるような気がしています。数年以内に社会保障制度上大きな変化が出る年がくるだろうな、そんな風にこの提言を自分は読んでみましたよ。
これから数年、医療や介護はどうなっていくんでしょうね・・・先読みして準備していきたいと思っています。

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