公開日:2018年05月06日

<自治体戦略2040構想研究会>の資料を読んで~自治体は本当に変化していけるのか?

こんにちは、連日外来診療中の札幌のかかりつけ医@今井です。

最近地方の公立病院関係の資料を少し探していることがあったのですが、その中でそもそも地方自治体自体が今後どうしていくべきだろうか、と考えることが個人的に多くなりました。

2025年、さらにその先の40年を見据えて自治体がどう変化していくべきか・・・・何か考えるためのいい資料ないかなと思っていたら<自治体戦略2040構想研究会>からちょうど4月に資料がでていました。

内容としては地方自治体でこれから起こるであろう問題と、さらにそれを踏まえてどう行動すべきかを書いてありますが、非常にまとまっていてわかりやすい資料かなと思いましたので皆さんも是非一読してみてください。

自治体戦略2040構想研究会第一次報告は概要本体との構成となっていますが、ひとまず以下には概要のスライドと本体部分の中から本当に一部の文章のみ抜粋してみたいと思います。

個人的にはこの文書にあるように地方自治体の役割と業務遂行や内容自体が大きな転換を迎えていると感じていますが、どれだけ長がリーダーシップをもって変化させていくことができるのかは懐疑的です。おそらくは遅々として変化はすすまないんじゃないかと思いますが・・・・札幌はせめて時代に取り残されるような自治体にはなってほしくないですがどうなるでしょうかね?皆さんの住んでいる自治体はどうでしょうか?

 

↓以下資料です

①概要

 

↓さらに本文からの気になる文章の抜粋です。(赤は今井が気になる部分です)

 2040 年頃を見据えた自治体戦略の必要性

○ 我が国は、少子化による急速な人口減少と高齢化という未曾有の危機に直面している。
○ 総人口は既に減少局面に入っている。10 年前(2008 年)の1 億2,808 万人をピークに減少し始め、人口減少のスピードは加速し、国立社会保障・人口問題研究所の出生中位・死亡中位推計(平成 29 年推計)によれば、2040 年には1 億 1,092万人となる。その頃には毎年 90 万人程度減少すると見込まれている。
出生数は、ついに年間 100 万人を下回った。団塊世代(1947~49 年生まれ)が生まれた頃は毎年260 万人以上、団塊ジュニア世代(1971~74 年生まれ)の頃には毎年 200 万人以上あった。しかし、団塊ジュニア世代に続く第3次ベビーブームは現れなかった。2017 年には 94 万人まで減少し、2040 年には 74 万人程度になると見込まれている
高齢化は、三大都市圏を中心に急速に進行する。2015 年に3,387 万人であった高齢者人口(65 歳以上)は、団塊ジュニア世代が全て高齢者となる2042 年に 3,935万人(高齢化率 36.1%)でピークを迎える見込みである75 歳以上人口はその後も 2054 年まで増加し続ける見込みである。
○ 国及び各自治体は、まち・ひと・しごと創生総合戦略を策定し、少子化対策や移住施策を進めている。しかしながら、今後数十年間は、人口減少と大都市部の急速な高齢化は避けられない。2016 年に 1.44 であった合計特殊出生率が、2030 年に 1.8 程度、2040 年に人口置換水準の 2.07 程度まで上昇したとしても、その後長期にわたり人口減少は続く見込みである
○ 世界の人口は増加する。2015 年には 74 億人であった世界人口は、2040 年には92 億人まで増加すると見込まれている。しかしながら、東アジアでは少子高齢化が進むため、増加分の多くはアフリカ(9 億人)、南アジア(インド:3 億人、パキスタン:0.9 億人)に集中する。欧米諸国の中には、移民等の受入れが、出生率の低下を補う役割を果たしている国もある。我が国においては、近隣諸国も少子化が進んでおり、日本語の壁が大きいなど、様々な課題がある中で、急速な人口減を補うほどの移民等を受け入れることは現実的ではない。
○ 世界経済は、欧米からアジアに重心を移す。アメリカ、ヨーロッパ、日本の比重が落ち、中国、インドの比重が増すと予想されている。G7 で世界経済を主導できた時代が、完全に過去のものとなる。
AI やIoT、ロボット等のいわゆる破壊的技術がもたらす技術革新は、第4次産業革命ともいわれ、萌芽が見え始めているに過ぎない現在でも既に社会に大きな影響を与え始めている。破壊的技術を用いてデジタル・プラットフォームを提供する企業が台頭する中、今後短期間のうちに世界の産業構造に激変をもたらす可能性があるが、我が国の産業はこうした潮流に取り残されてはならない。急速な人口減少と高齢化が進む我が国は、破壊的技術を大胆に取り入れる必要がある
いわば危機をチャンスに変える取組である。これが結実すれば、今後高齢化が進む国が多い中、そうした国々に先駆けて課題解決を果たすモデルとなり得る。
○ 現在、我が国の住民生活に身近な行政サービスの多くは地方自治体が支えている。今後人口減少が進み、我が国を取り巻く環境に不確実さが増す中でも、地方自治体が、安定して、持続可能な形で、住民サービスを提供し続けることは、住民が健康で文化的な生活を送り、地域経済を守るために欠かすことができない。
○ 明治期の廃藩置県、市制町村制の制定等によって生まれた我が国の都道府県、市町村は、戦後、日本国憲法と地方自治法の下で、昭和・平成期の市町村合併や地方分権改革を経て、その規模能力を大幅に向上させ、権限や自由度も強化されてきた。これらは、戦災復興から高度成長、安定成長へと社会経済情勢が変化し、人口も地域における行政需要も増大する中で、行われてきた改革であると言える。
しかしながら、人口増加を前提としてきた制度や運用は、人口減少下では、そのまま適用しても所期の効果を発揮できない可能性が高い。高度経済成長期に整備したインフラや公共施設は、まもなく更新時期を迎えるが、対象人口が減少する中で、何を残し、何を活かすのか。サービスの供給体制も、将来の人口構成に合わせて、どうすれば最適化できるのか。物的・人的投資を更新すべき時期であるからこそ、21 世紀中盤の社会経済に対応する新たな行政のストラクチャーを構築するチャンスでもある。人口増加モデルの総決算を行い、人口減少時代に合った新しい社会経済モデルを検討する必要があるのではないか。
○ そこで、本研究会は、取り組むべき対応策をバックキャスティングに検討することとした。過去からの延長線で対応策を議論するのではなく、将来の危機とその危機を克服する姿を想定した上で、現時点から取り組むべき課題を整理する。
まずは、子育て、教育、医療、介護、インフラ、公共施設、公共交通、空間管理、治安、防災、労働、産業など、自治体行政の主要分野で、高齢者人口がピークを迎える 2040 年頃に想定される課題を議論した。

2040 年頃を見据えた自治体戦略の基本的方向性

長期にわたる少子化によって、今後、本格的な人口減少を迎える我が国を、国際社会はどのように見ているのであろうか。
我が国が国際社会から信任を得られるかどうかは、長年指摘されてきた経済や財政の健全性の観点に加え、社会の機能不全を自ら克服できるという意味でのレジリエンス(=社会の強靱性)が問われるのではないか。
短期間の財政効果を追求した取組のみでは、我が国の地域社会の持続可能性に対する根本的な疑問と不安に応えられない。今回、本研究会が提示した課題や論点は、我が国の行政の制度設計の根幹に当たる部分を含めた見直しを迫るものである
課題は内政全般にわたる。その改革を総合し、国内に行き渡らせるためには、各行政分野における取組と併せて、自治体行政のあり方の根本を見直す必要がある。
医療、介護、インフラ、空間管理など、住民サービスの多くを支えるのは地方自治体である。2040 年頃にかけて迫り来る我が国の危機を乗り越えるべく、全ての府省が政策資源を最大限投入するに当たって、地方自治体も、持続可能な形で住民サービスを提供し続けられるようなプラットフォームであり続けなければならない。
今後、本研究会において議論すべきは、新たな自治体と各府省の施策(アプリケーション)の機能が最大限発揮できるようにするための自治体行政(OS)の書き換えである。住民の福祉のため、自治体行政のあり方も、大胆な変革を構想する必要がある
2040 年頃の自治体の姿は運命的に与えられるものではなく、住民が自らの意思で戦略的につくっていくことができるものである。将来のことは完全には予測できないという前提の中で、自治体が住民とともに落ち着いて建設的な議論に向かい、時間をかけて準備ができるよう、我が国全体で共有できる長期的な戦略を早い段階で定め、住民にとって実感のできる選択肢を示す必要がある。
人々の良質な生活を満たす公・共・私のベストミックスのあり方や方法は、都市部と農村部、東京圏と東京圏以外など、地域によって大きく異なる。自治体は、地域の戦略本部として、制度や組織、地域の垣根を越えて、資源(施設や人材)を賢く戦略的に活用する必要がある。個々が部分最適を追求することにより合成の誤謬に陥らないようにしなければならない。
加えて、自治体には、専門性を発揮し、住民の合意形成をコーディネートする役割がより求められることとなる。地域ごとの公・共・私のベストミックスに移行するため、自治体は、単なる「サービス・プロバイダー」から、公・共・私が協力し合う場を設定する「プラットフォーム・ビルダー」への転換が求められる

急速に人口減少が進み、特に小規模な自治体では人口の減少率が4~5割に迫る団体が数多く生じると見込まれる。そのような中では、個々の市町村が行政のフルセット主義を排し、圏域単位で、あるいは圏域を越えた都市・地方の自治体間で、有機的に連携することで都市機能等を維持確保することによって、人が人とのつながりの中で生きていける空間を積極的に形成し、人々の暮らしやすさを保障していく必要がある
人口減少が先行して進んできた県においては、県が市町村と一体となって様々な施策を展開して地域を守ろうとする動きが顕著になっている。都道府県・市町村の二層制を柔軟化し、それぞれの地域に応じた行政の共通基盤の構築を進めていくことも必要になる。
医療・介護ニーズの急増や首都直下地震への対応など、東京圏の大きな行政課題に対処していくためには、いわゆる埼玉都民や千葉都民なども含めた東京圏全体のサービス供給体制を構築していく必要がある
若年層の減少により、経営資源としての人材の確保がより厳しくなる中公・共・私のベストミックスで社会課題を解決していくことが求められる。他方、定年退職者や出産を機に退職した人など、企業等で築き上げた能力が十分活かされず、活躍の場を求めている人も多い。就職氷河期世代には、これまで十分活躍の場が与えられてこなかった人がいる。こうした人々が多様な働き方ができる受け皿を作り出す方策について検討する必要がある。
これまで自治体が個々にカスタマイズしてきた業務プロセスやシステムは、大胆に標準化・共同化する必要がある。更には、今後、ICT の利用によって処理できる業務はできる限りICTを利用するというICTの活用を前提とした自治体行政を展開する必要がある
総務省においては、自治体行政の新たな姿を描く際には、ICT や郵便、統計などを含め、その総力を挙げて、有機的に連携して取り組む必要がある。
こうした基本的方向性をもとに、2040 年頃を見据えた自治体戦略として、どのような行政経営改革、圏域マネジメントを行う必要があるのか、さらに具体的な検討が必要である。

 

書いてあることはすごい立派ですがどこまで地方自治に落とし込めていけるのか・・・・期待を込めて見守っていきたいと思います。