公開日:2018年03月10日

最速で2020年の医療体制、診療報酬改定を予想してみる~過去10年の改定を振り返って

こんにちは、本日は少し時間があった札幌の在宅医@今井です。

2018年の診療報酬改定が告知され医療関係者ならすでに目を通したでしょう。自分は現代では医師はいい医療を行うだけではなく、時代に即した医療とはなんなのか、社会から必要とされる医療とはなんなのかを常に考え、それを提供することが必要ではないかと考えています。なので今回の診療報酬改定を踏まえさらに先にどのように社会が変わっていくのかを医療者としても医師としても前もって考えていくことが必須ではないかと思っています。

ということで早速ですが2020年の医療体制、診療報酬改定がどのようになるのかを考えてみたいと思います。思考の素材となるものは国が公表してきた過去10年の診療報酬改定の資料、それを地域包括ケアの観点からまとめつつ見ていきたいと思います。資料で出すのはわかりやすく表紙だけにします。全体像の把握にはこれがいいですので・・・では少し長いですがみていきましょう。

2010年(平成22年)の改定

2010年改定のまとめ

○トータル205Pと簡潔 地域包括ケア関係は約40ページ

○急性期や病院関連の項目が多く在宅医療関係の項目はわずか、ただ往診料のアップや訪問看護の充実など在宅を充実する方向での改定であった。

○イノベーションの評価はなし、医師の業務負担軽減や他職種へのワークシフトはについては指摘する程度

2012年(平成24年)の改定

2012年改定のまとめ

○トータル270Pとやや増加、地域包括ケア関係は約60ページとこちらも増加

○機能強化型在宅療養支援診療所が創設された。ターミナルケア加算も分割、在がんへの名称変更と評価アップも、さらに訪問看護では認定看護の訪問の評価などさらに充実の方向となった。

○ICT等のイノベーションの評価はなし

2014年(平成26年)の改定

2014年改定のまとめ

○トータル232Pとやや減、地域包括ケア関係は約50ページとこちらも大きくはかわらず

○外来の機能分化目的に地域包括診療料が創設され大病院の外来を制限する方向へシフト開始(かかりつけ医制度への第一歩)。地域包括ケア病棟が創設。機能強化型在宅療養支援診療所の要件を厳しく、さらに施設系の訪問診療の点数を激減。機能強化型訪問看護ステーションの創設。訪問薬剤、歯科の推進。

○ICT等のイノベーションの評価は変わらずなし

2016年(平成28年)の改定

2016年改定のまとめ

○トータル377Pと大幅増加、地域包括ケア関係は約100ページと大幅に注力され変更された

○地域包括診療料の条件緩和。小児かかりつけ医、かかりつけ薬局、薬剤などかかりつけというキーワードが頻出するように。薬剤師の対人業務の評価。在宅専門診療所の創設。退院支援を充実。大病院の定額自己負担の導入。病院の在宅復帰率がより厳格になり在宅復帰推進。病院からの訪問看護の評価、複数の訪問看護の組み合わせの推進など。

○ICT等のイノベーションの評価はなし、病院では事務職の評価アップなどタスクシフトの推進が少しみられたが在宅分野ではなし。

2018年(平成30年)の改定

2018年改定のまとめ

○トータル492Pとさらに増加6~10年前の倍以上のページ数に。地域包括ケア関係は約150ページ近くと診療報酬毎に改定の主項目となってきている

○地域包括診療料の条件緩和。病院から地域への入退院連携のさらなる重視、特定の関係でもOKに(グループ化の肯定)かかりつけ、という言葉がキーワードに。在宅復帰がより鮮明に。介護医療院の創設。大病院の外来機能分化をさらに推進。複数医療機関の訪問診療の緩和、複数の診療所の連携を推進する方向に。地域支援機能を要する訪問看護ステーションの創設。看護による看取りが可能に。ACPの推進。特養における医療の外付けの開始。医療と介護の連携の推進。

○オンライン診療料の創設、ICT利用した勤務場所の緩和。医療従事者師の負担軽減の推進がより一層鮮明に。

2020年(平成32年)の改定

ということでまとめつつ2020年にどうなるか考えて見たいと思います。

こうやって過去10年分くらいまとめてみると診療報酬の改定内容の増加とそれに占める地域包括ケア部分の割合が劇的に増えてきていることが良く理解できました。診療報酬における急性期医療のウエイトは急激に落ちてきています。

さて細かい内容は色々ありますが大事な部分は枝葉をみるのでなく幹をみつめること。2020年の診療報酬改定における大きなポイントはこんな感じになると思います。

①改定内容は多岐に渡り総ページ数は600P程度。うち地域包括ケア関係は200P程度となる

②かかりつけ医制度の推進によるフリーアクセスの制限が必ず強くなる。具体的にはもう400(300?)床以上の病院には紹介状ないとかかれない、かつそれらの病院自体も外来機能をどんどん外に出すようにさらに紹介率が厳しくなる。医療機関の機能分化がある程度完了。

③在宅医療では在宅療養支援診療所を核とした複数の診療所の連携が評価される。特に在宅専門は必ず他の診療所と連携すること、地域でケアマネと連携し往診体制に応需することなどが必須化される。

④地域包括ケア病棟からの機能がさらに進化。救急への体制や病院からの訪問看護がさらに推進。

⑤タスクシフトがさらに強烈に推進。在宅医療における訪問看護師の特定行為が許可、看取りも可能に。

⑥オンライン診療が在宅で本格的に導入。さらにICTが診療にも勤務にもどんどん導入。

⑦リハビリは包括化&アウトカム評価の推進だろうなぁ

⑧AIが診療報酬上定義される

 

どうでしょうか?過去10年分の診療報酬の改定を読むと国(厚生省)はここまでもうグランドデザインを描いているように思えます。さてさてどう準備していくか・・・・早いですがもう2年後の改定を考えながら診療所運営していきたいと思います。皆さんのご意見はどうですか?よかったら教えてくださいね。

 

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