公開日:2016年03月04日

認知症独居の人の支援について

毎日新聞の記事にでていましたが認知症独居の人の支援について虐待が疑われるのではないか、と支援の在り方が問われていましたね。ケアマネさんの倫理やケアプラン作成時の考え方の姿勢というのは基本的には患者さんありきがもちろん一番だと思いますが、現実的には使える金額や点数、その人の認知の状況や環境、家族状況でどのように妥協し、折り合いをつけ、できる範囲の支援していくかか悩むことが多いと思います(在宅医療もそうですしよくわかります)。施設入所も人によってはすごい拒否や暴力行為ある人もいますし・・・・・・、さすがにこの事例はやりすぎかもしれませんが、どこまで本人の意思を尊重してあげるのか難しい面も確かにありますよね。

自分が見ている患者さんも金銭面などの問題もあり本当にギリギリのところで生活している人が結構います。ヘルパーさんが入る点数ないため、診察時に同行の看護師さんと自分で定期的に食事の用意してあげている患者さんもいますが、それも健康にすごしてもらうためには必要なことかなと思って時間をかけてやっています。

これからこのような独居で身寄りのない患者さんは爆発的に増加すると思いますが、ケアマネさんだけでなく在宅医療の関係者もきちんとした姿勢で支えていけるでしょうか。臨床倫理面での研修は欠かせなさそうですね。

 

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=131124 より

ケアプランで「1日1食」…認知症男性が「虐待」通告

 

独り暮らしで認知症を発症した堺市北区の男性(82)の訪問介護について、市が医療関係者からの通告を受け、不十分な介護実態を把握しながら、約2か月後の昨年11月まで、男性を特別養護老人ホームに入所させるなどの措置を取っていなかったことがわかった。食事を1日2回から1回に減らされ、排せつ物もきちんと処理されていなかったという。市は「不適切な介護だった。再発防止に努める」としている。

◇「本人の習慣」

市などによると、男性は脳性まひを患い、2009年から訪問介護を受けていた。12年頃からは掃除や洗濯に加え、食事も頼むようになったが、次第に認知症の症状が進行。13年5月には、入浴や排せつが1人でできない「要介護3」に認定された。

ところが、この男性を担当している社会福祉法人の女性ケアマネジャーは「1食以上提供しても残すだけ」として、介護サービスを提供する際に作成したケアプラン(介護計画書)を昨年2月から変更。平日の食事に関しては朝だけ弁当を届け、夕方は食事を提供しないようヘルパーに指示した。土、日曜日に訪問する別の介護事業者にも、「1食のみ提供」と伝えていた。土、日曜日の介護に関しては訪問回数自体が1回と少ないため、おむつの取り換えが不十分となり、部屋を排せつ物で汚すこともあったという。

昨年9月、「虐待とも言える悲惨な状況で独り暮らしは無理」とする医療関係者の指摘を受け、北区役所が調査した。いったんは「問題なし」と判断したが、その後、男性宅が排せつ物で汚れていることなどを確認し、男性を保護。現在、特別養護老人ホームで生活する男性は、「要介護4」と介護の程度が進んでいる。

男性への介護内容について、ケアマネジャーら同法人側は「1日1食は、この男性の習慣。手の届く範囲に果物やお菓子を置いていた」とし、「独り暮らしは男性の意思だった」などと説明。一方、市側は「不適切な支援状況にもっと早く気付き、施設に入ってもらうべきだった」と対応が不十分だったことを認めた。

◇適切さ検証

適正な訪問介護には、何が必要か。厚生労働省老健局は「ケアマネジャーやサービス提供者らの担当者会議が医療関係者ら他の専門家の意見を積極的に聞き、ケアプランが妥当かどうか見直すべきだ」と指摘する。

同局はプラン改善のため、プランを抽出して調べる「ケアプラン点検」を勧めており、全国の自治体の約6割が実施。堺市も11年度から始め、14年度は68の事業所で計209件、106人のケアマネについて調べた。今回の問題は対象外だったが、サービス提供の根拠が薄かったり、担当者間の連携や検証が足りなかったりした点に注意を促しているという。

◇支援のあり方

認知症を患う独り暮らしのお年寄りは、どう支援すべきか。河野あゆみ・大阪市立大教授(在宅看護学)は「本人の意思は大事だが、判断能力が低下している場合もある。ヘルパーやケアマネジャー、行政担当者ら周囲は、敏感に意向を酌み取り、どうすべきか『代弁』することも大切」と強調。そのうえでグループホームや施設の利用・入所を検討するよう勧める。

今回の問題については「食事の提供が日に1度というのは、仮に本人の望みとしてもどうなのか。人は1日3食が基本。介護状況がお年寄りの人権を守れているか、もっと点検すべきだったのでは」と話す。(吉田誠一)