公開日:2016年06月27日

在宅での治療方針の意思決定について

今日だけで患者さん二人から「先生体でかくなったね」っていわれたんです・・・・・

 

こんにちは、土日ですが看取りの患者さんなどいたために診療していたため更新できなかったんです(決してさぼっていたためではありませんので・・・・って自己弁護になっていますね。) 

さて本日は認知症の方や独居の方など今後の治療方針についてどうしていったらいいんだろうと悩む患者さんが結構いました。なので本日は在宅での治療方針の意思決定について、どのような点が病院と違うのか少し述べてみたいと思います。

まずは在宅医療での意思決定で決定的に病院と違う点は・・・・「治療のゴールの設定が明瞭ではないこと」が一番ではないでしょうか。

病院では①診察→②検査→③説明→④治療(投薬もしくは手術など)→⑤効果確認→⑥治療について相談→⑦再治療もしくは終了、といったプロセスになることが殆どだと思います。③から④にかけては選択肢はいくつかあることが通常ですが、治療方針についての意思決定はその場で(もしくは多少の時間差をもって)決断されます。ここがあいまいになることはそう多くはないですよね。そして治療の目標についても適宜修正されることはありますがきちんと設定されます。

一方在宅の場合は①から⑦までのプロセス自体は大きくはかわりないですが、①治療の目標自体が治癒を目標としたものではなく、患者さん自身の価値観を尊重した生活をすることが目標であることから、病院のような具体的な項目の設定はし難いこと②意思決定者が本人でないことがままあること③治療の方向性や目標の設定が医師と患者さんとの関係のみではなく、多職種が関係していくこと、などが特徴でしょうか。

なので在宅療養の方向性の設定ができないままの患者さん、病院だと少ないんですが在宅だと結構いるんです。そんな患者さんが急変した時によく病院に検査や治療依頼するんですが、そういう時っよく病院の先生は「普段から診療しているのに療養の方向性も決めきれないんですか?」って言われることもあります・・・・・(フィールドが違うと病院では当たり前のことが在宅ではできないこともあるっていうことを病院の医師もわかってくれるといいんですが・・・そんな理解ある先生は少ないです)

そんな感じで毎日意思決定の支援は患者さんとの会話の中で意識して自分はするようにしていますが、在宅は基本的には多職種が関わるので、医師のパターナリズムが患者さんや他の連携職種の方などにも影響しないように注意していかないといけませんね。ってぐだぐだ書きましたが大体在宅医はこんなこと考えながら診療しているんです・・・・(急な患者さん依頼したときの言い訳書いている訳ではありませんので・・・)

 

さて本日の医療記事ですがMRICより以下の記事です。日本と比べアメリカでは慢性疼痛への麻薬処方は一般化していますがそれに関しての考察の記事です。読みながらCNNでのニュースも確かに似たようなの最近みたなと思って探したらありましたので気になる方はそちらもみてみてくださいね。(翻訳は自力でお願いしまーす)

CNNの記事 Opioid Prescriptions Drop for First Time in Two Decades http://www.nytimes.com/2016/05/21/health/opioid-prescriptions-drop-for-first-time-in-two-decades.html?_r=0

MRICの記事

Vol.146 アメリカでの安全なオピオイド処方に向けて http://medg.jp/mt/?p=6816

ワシントン大学医学部内科
トーマス・シシェルスキー

2016年6月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

アメリカでは現在、オピオイド中毒や過量投与の蔓延が問題になっている。そのため、オピオイド中毒や依存が起こるリスク因子とは何かを理解することが重要になっている。麻薬類(Opiates)はアヘンから自然誘導されたもので、コデインやモルヒネのような薬剤も含まれる。半合成麻薬類は自然物と合成化合物の組み合わせで、ジアセチルモルヒネやオキシコドンのような薬剤が含まれる。そして、合成麻薬類とは全てが合成された化合物でメタドンやフェンタニルのような薬剤 であり、オピオイド(opioid、モルヒネ様物質)はこれら全ての総称である。アメリカでのオピオイド中毒危機の現状認識のためには、オピオイドがどのように処方されてきたのか、その経緯をまず理解することが肝要である。1996年より前は、オピオイドはがん性疼痛にのみ処方されていた。そして、全ての慢性疼痛において、その治療のためにオピオイドを処方することは適正な実地医療であるということを、1996年に疼痛関連の二つの学会が示した。それと同時に、オキシコンチンが発売され、慢性の非がん性疼痛に対する処方が大々的にマーケティングされるようになった。

この当時、「疼痛」はアメリカでは重要な臨床徴候の5番目に位置すると考えられており、積極的な疼痛治療が一つのゴールになっていた。その結果、図に示すように、アメリカでのオピオイド処方は指数関数的な上昇を見せた。特徴的なのは、処方数の増加と共に、一処方あたりのオピオイド量も増加したことである。

残念ながら、しかし予想通りではあるが、オピオイド関連の過量投与による死亡数がアメリカでは顕著に増加し始めた。オピオイド関連の過量投与に伴って、毎年1万8千人以上が死亡し、このような中毒と過量投与の蔓延により1999年以降16万5千人以上の累積死亡が起こっている。

オピオイドの使用をめぐっては多くの課題があり、オピオイド中毒、誤使用、オピオイドの医学的理由以外での使用や流用といったものが挙げられる。オピオイドの流用とは、当該薬剤の処方を受けていない他人にそれら薬剤を渡してしまうことを指す。とりわけ、流用されるオピオイドのほとんどは、家族や友人からのものであり、しかもそれらオピオイドは一人の医師のみから通常入手されている。

オピオイド中毒の蔓延は、社会的経済的な各層の全てに影響を与えるものであり、ミュージシャンや役者なども例外ではない。例えば、有名ミュージシャンのプリンスが2016年に死亡したのは、おそらく過量投与によると考えられている。また、有名俳優であるヒース・レジャーは処方薬により2008年に死亡した。アカデミー賞受賞者のフィリップ・シーモア・ホフマンはオピオイド処方の服薬を繰り返した後、ヘロインの過量投与により2014年に死亡した。

さらに、オピオイド中毒の蔓延は感染症にも大きな影響を与えており、インディアナ州では注射用オピオイド薬のオキシモルフォンに関連し、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)のアウトブレイクが現在発生している。

現在、アメリカでは食品医薬品局(Food and Drug Administration)と麻薬取締局(Drug Enforcement Agency)がオピオイド処方の規制を行っている。しかし、適切な免許を所持している医師でさえあれば、処方は誰でも行うことが可能であり、それらの処方箋もがん性疼痛に限定されるものではない。そこで、多くの州でこれら処方の規制強化の取り組みが始まっている。例えば、ミズーリ州を除く全ての州で、処方医師と薬局の数を監視する処方監視プログラムが実施されており、誤った使用の防止に目標が置かれている。注目すべきことは、オピオイド処方の大部分を行っているのは、家庭医と内科医だということだろう。

我々は、オピオイド中毒や依存に陥るリスクを評価するために、リスク因子予測モデルを開発する研究に現在取り組んでいる。私はオピオイド中毒や依存に陥るリスクを研究するために65万人のデータベースを構築した。そして、薬局へのアクセスや地理的な状況も含めた人口統計学的、臨床的、行動学的な一連のリスク因子の評価を行っているところである。

これまでのところ判明しているオピオイド中毒の予測因子として、若年者、恒常的な使用、そして精神疾患の既往、薬物中毒や飲酒が挙げられる。

アメリカ疾病予防管理センター(Center for Disease Control)が、オピオイド使用を減らすためのガイドラインを最近発表したのは朗報と言える。オピオイドは疼痛管理において、最優先でもないし好ましくもない。使用するにしても、最も低い用量で、最短期間での使用とされるべきだろう。さらに言えば、処方に際しては安全な処方のためのリスク因子評価も実施されるべきだ。処方権の付与に先立って、オピオイド処方者が追加のトレーニングを受ける必要があるかどうかの問題も残っている。このように、慢性疼痛を効果的に治療するためには、さらに多くの研究が必要となるだろう。

 

ってようやく疲れて帰ってきたらまた診療依頼でした。疲れたからキットカット食べて夜間往診に出発です、行ってきまーす。 (だから体重減らないんです・・・・)